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001:クレヨン
(鋼 ハボック×ロイ)




「ハボ、ろいおえかきしゅる」


まだ言葉を覚えたばかりの幼さが残る子供が俺に話しかける。

『ろい』

その名前に聞き覚えはあると思うが、何かの間違いではなく、彼はあの『ろい』なのだ。
とある錬金術のリバウンドにより俺の上司兼恋人であるロイ・マスタング大佐は 幼い頃のろいになってしまったというありえなそうでありえてしまった話である。
まぁ、錬金術ってのはいろいろなことで摩訶不思議なことばかりなので(大将曰く) 正直練金術に詳しくない俺からしてみればどうでもいい話で…


…どうでもいい話…じゃないんだけどさ。今回の件は、


「はい、ろいのスケッチブック持ってきましたよ」

「ありがちょうハボ」


そういってろいにスケッチブックと黒いサインペンを渡すとろいはなぜかいやいやしてだだをこね始めた。


「どうしたんですか?ろい?」

「ううー、くりょいや」


俺が手渡した黒いサインペンをぽいっと放り投げて何かを伝えたいように目を見つめてくる。
可愛い…可愛いよ!
マジ話、大佐にこんなに可愛い子供時代があったなんて思ってもいなかった。
いや、普段も可愛いけど、ぷにぷにしてて肌触りもいいけど、違うんだよ。何かが違うんだよ! こう…愛くるしいというかもう子供特有の何かに俺のハートはきゅんきゅんだった。


「黒がいや?」

「こくり」

「でもろいはいつもこれでお絵かきしてたでしょ?」

「…くれりょん」

「くれりょんがいい…ハボのきいりょとあおいりょがありゅくれりょんがいい」


思い出した。確かクレヨンはこのあいだブレダの従兄弟がこっそりブレダの鞄の中にいたずら半分で忍ばせて、 それを司令部でぎゃーぎゃー騒いでいたときに、ロイが興味を示すものだからブレダが使わせてあげてたっけ…あれか。

ブレダ曰く、「大佐相当気に入ってたぞクレヨン。特に黄色と青は使用率半端じゃなかった…俺あとで従兄弟に怒られたんだぜ。」


まさかその使用率が俺の似顔絵を描くために使用していたなんて思いもしなかったので自然とほほが緩む。
駄目だ…俺…正直今自分の顔を見る勇気がない(笑)

そんな俺を不振に思ったのか、ろいが必死に見上げて心配そうな顔を向ける。


「ハボ?ハボハボ?」

「ん…何でもないですよ。今ここにクレヨンはないので、今度ろい専用のクレヨンを買いにいきましょう」

「せんりょう?ろいのもにょ?」
「そうですよ」


とたん目を輝かせて俺に必死にしがみついてきた。
しがみついでにその場でぴょんぴょん飛び跳ねたり俺の足にぐりぐり頭を押しつけてきたり…。 仕舞いには、「でもろい、きいりょとあおいりょがあればいい」なんて言うから、



…その言葉はクリティカルヒットでも食らった気分でした。




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