次、会う時は… 今日は、ここ並盛中学校の卒業式。 オレやツナ、獄寺たち二年生は、卒業生を送る側として卒業式に参加した。 オレ達は同級生である笹川の兄である了平さんを送るつもりで参加したのだが、その式には思いもよらない人物も参加していた。 「まさかあの雲雀さんが、卒業生として式に参加してるとは思わなかったよ」 「ホントですね。でも、あの並中好きが卒業するとは…。しかし、これで十代目を脅かす奴がいなくなりましたね!」 「…そうだといいけどね(でも、獄寺くんがいるからなぁ…)」 「まぁ、あいつもいつかは卒業するんだし別におかしくはねぇだろ?」 「まぁな…」 「オレは、ヒバリが学ランじゃなくてこっちの制服を着てたことに驚いたのな〜」 そう、あの並盛中学校の風紀委員長である雲雀恭弥がこの学校を卒業するらしい。 それも、いつも着ていた学ランではなくこの学校の規定の制服であるブレザーを着て。 式に参加していることは、先生やヒバリの周りに座っていた生徒は知ってたみたいだけど、遠くに座っていた他の卒業生達も知らなかったみたいで、答辞を読む人物の名前を挙げられたときに周りはざわついてたっけ。(まぁ、ヒバリの睨みですぐに収まったけどな) 式が終わって、オレたちはいつもの溜まり場である屋上で飯を食いながらヒバリの事を話していた。 「でも、ヒバリのやつここ卒業して何するんだろうな」 「んなの、知るかよ。」 「そういえばヒバリさん、イタリアに渡ってディーノさんの元で色々と勉強するらしいよ」 「「イタリア?」」 「うん。昨日からディーノさんが家に泊まりに来てて、話を聞いたから間違いはないと思うんだけど」 「ディーノさんとこで、何の勉強すんだ?」 「さぁ?なんか、言ってたけどオレには難しくてよくわかんなかった…」 「跳ね馬の所で、勉強っすか…?」 「う〜ん、よくわかんない」 まさか、並盛を出てイタリアに渡るとは思わなかった。 まぁ、ディーノさんはヒバリの家庭教師やってたから、そこで勉強するのはわからなくもない。 けど… 「けど、これでヒバリはマフィアごっこから抜けちまうんだな」 「…山本…」 「あいつ、十代目の守護者だってわかってるんすかね?」 「あ、はは…(マフィアになる為の修業だったりして…)」 「お、卒業生が出てきたぜ」 卒業生も担任の先生からの最後の言葉を聞き終わったのか鞄を持ってぞろぞろと校舎から出てきた。 「あ、ホントだ。でも、ここからじゃヒバリさんやお兄さんはわかんないね」 どうやら、その中にオレの目当ての人物がいないらしい。 そうとわかれば、ツナ達には悪いけどそいつの所に行ってこようかな…。 「わりぃ、ツナ。オレも先輩たちの所に行ってくるわ。先に帰ってていいぜ」 「うん。オレももう少ししたらお兄さんの所に行って、挨拶したら帰るよ」 「けっ、せいぜい泣きついてこいや」 「ご、獄寺くん!」 「ははっ。これくらいで泣くほど、弱くはないのな〜」 そう言って、オレはツナ達と別れた。 その後、少しの時間ではあるが部の先輩達に「おめでとう」と「ありがとう」の言葉を言って別れた。 先輩達には悪いが、目当ての人物に会うにはあまり時間はかけていられない。バタバタバタ オレは、挨拶もそこそこに切り上げて応接室に向かって走った。 そう、会いたいのはこの学校の君臨者である雲雀恭弥だ。(正式には"だった"だな) 「ヒバリー!」 バターンと勢いよく応接室の扉を開けて、ヒバリに会いに来たのにいきなりトンファーを喰らった…。 「いってぇ!何すんだよ、ヒバリぃ…」 あまりの痛さに、殴られた箇所をおさえながらその場にしゃがみ込んだ。 「うるさいよ。それに、応接室の扉壊す気?あと、廊下も走るなって教えられてるでしょ」 「最後までそれかよ」 「何言ってるのさ。あくまでも3月中は僕も並中生だからね。それまでは、僕がルールに決まってるでしょ」 「はは、ヒバリらしいな」 この"僕様"は、最後まで健在のようだ。ま、それがなきゃヒバリじゃねーしな! 「それより、何しにここまで来たのさ?」 「あぁ。卒業おめでとうを言いに来たのと、ちょっと聞きてぇことがあってな」 「そういえば、僕がここを卒業することがみんな珍しいみたいだね」 僕だって流れくらいは把握するのにね…そうヒバリは言葉にした。 ヒバリは、ホントにこの学校が好きなんだな。ただ単純にそう感じたってのもあるが、ヒバリの顔が寂しそうだったら…。 「確かに驚いたけど、オレはヒバリがブレザーを着てることにビックリしたのな」 「まぁ、最後くらいは規定の制服を着てもいいかなと思ってね」 「でもやっぱ、学ランの方が似合ってるぜ!」 「…ありがと」 おぉ?なんか素直? あのヒバリが礼を言ってきた。 「それで、聞きたいことって?」 「あ、あぁ。ついさっき、ヒバリがイタリアに勉強しに行くって聞いたから…」 「本当かどうか知りたいってわけ?」 「まぁ、それもあるけど…」 「けど?」 「…なんか、寂しいなって…」 それだけ言って、オレは俯いた。 あんな事言って、恥ずかしいって気持ちもあるけど自分で子供っぽいと思ってしまった。少し経って、ヒバリも何も言わないから顔をあげてみたら… 「ヒバリ、顔赤いぜ」 「…うるさいよ」 一言だけ言うと、後ろを向いてしまった。なんか、可愛くね? …うん、可愛い。こんな行動されたらオレ、ますます惚れちまうぜ。 「いやぁ、やっぱヒバリの事好きだなぁ」 あ、ヒバリの顔が余計に赤くなった。 「…ぼ…も…」 「?」 何か言ったみたいだが、声が小さくて上手く聞き取ることができなかった。 だから首を傾げてみると、ヒバリは顔を赤くしたまま勢いよくオレの方を向いた。 「…僕も…好きだよ!」 「!!!」 やべっ、オレまで照れてきた…。 まさか、ヒバリに「好き」と言われるとは思わなかったから…。 「サンキュな!」 オレは赤い顔を見られたくなくて、ヒバリを抱きしめながら呟いた。(バレてるだろーけど)すると、ヒバリもオレの背中に手を回してきた。 「…本当だよ」 …しばらく抱き合った後、ヒバリはオレの質問に答えてくれた。 「僕は、イタリアに渡って勉強しようと思ってね」 「勉強したいだけなら、こっちでも出来るんじゃねーの?」 「普通のならね。僕がしたい勉強って、裏社会に関する事だから。そんな勉強、日本じゃできないでしょ?それに、僕はここの風紀からは離れるつもりもないから風紀委員を母体とした財団を作ってみようと思ってね」 「財団?」 「あぁ。赤ん坊からこの間、卒業記念にって小さな匣を貰ったんだ。その匣がなかなか開けられなくて、偶然僕のリングで開いたと思ったら中からはハリネズミみたいなのが出てきて…。結構、面白そうだから調べてみようかなって。で、調べるにはお金なんかも色々必要になりそうだから」 「それで、まずは財団を作ろうって事か…」 「そういう事。この並盛の地下を少し改造させてもらって、財団専用のアジトを作ろうかなって草壁と話してたんだ」 成る程な。そうやって、ヒバリ専用のあの部屋が出来上がったってわけか。 プライドの高いこいつの事だから、未来で会った自分と同じ事をしようとしてるとわかったら怒るだろうな…。小僧たちにも言われてるから、いわねぇけど。 「じゃあ、そういったことも考えてディーノさんとこで勉強するんだな」 「うん」 「じゃ、オレもその間に少しは強くなってヒバリを驚かせてみっかな!」 「へぇ、楽しみだよ。次に会ったときに、死んでたなんて御免だからね」 「おう!」 「じゃあ、君が僕を驚かせるくらい強くなるまで待っててあげる」 「んじゃ、オレが強くなってたら、ご褒美にずっと側にいてほしいのな…」 オレの今の最大のお願い。 なんかプロポーズみてぇだな(笑) 「仕方ないね。"ご褒美"だから、許してあげるよ。ただ、弱いままだったら僕直々に咬み殺してあげるよ」 ヒバリはいつもより少しだけ柔らかい笑顔をオレに向けた後、オレの額に唇を落とした。 「口じゃねーの?」 「そこにすると君、調子に乗りそうだからしない」 「ちぇっ」 よくわかってんじゃん。さっすが、オレの恋人♪ 「それじゃ、僕はもう行くよ」 「もうか?」 「うん。早めに行けば、それだけ勉強もあの人を咬み殺すこともできるからね」 「そっか。たまには、電話していいか?」 「たまに…ならね」 「やりぃ♪」 「ホントにたまに、だからね!僕だって忙しいんだから!」 「おう、わかってるって…(ツンデレだったっけ?)」 「なら、いいけど…。じゃあ、またね」 「ん、元気でな」 「君もね。…先に行って、待ってるから」 こうして、オレとヒバリは再開の約束をして別れた。 あれから5年後、オレは中学・高校と卒業した後1年だけスクアーロと修業をした。 1年だけとはいえ、内容は濃かった…。(何度か死にかけた…)最終的にはスクアーロの技を盗むことも出来たし、オレ的には満足なのな。 スクアーロは、まさか盗まれるとは思わなかったのか最終試験で(どれだけ強くなったか試された)この技を使った時は、驚いていた。そして今、オレはヒバリに会う為にイタリアに到着した所だった。 もうすぐヒバリに会えるのかと思うと、いつも以上に笑顔になる。 「何、ニヤニヤしてるのさ。気持ち悪いよ。」 周りは聞き慣れないイタリア語で話す人達がいる中、背中側から聞き慣れた母国後が聞こえてきて、振り向けば最愛の人がこちらに向かってきている。 「ひでぇのな。久しぶりに会ったってのに」 「知らないよ。変な顔してる君が悪いんでしょ」 「さすがのオレでも、傷付くんだけど」 「なら、もっと言ってあげようか?」 「遠慮します…」 久しぶりに会った恋人に対しても、容赦ない攻撃にオレは太刀打ちできなかった。 「でも、よくこの飛行機だってわかったな」 オレは、ヒバリに出発の日や飛行機の時間等一切話してなかったのに…。なんでかって?そりゃ、ヒバリの驚いた顔を見たかったから♪ それが見たかったから、ここまで黙ってたのにこの恋人はそんな願望すら打ち砕いてくれた。逆にこっちが、驚いたのな(苦笑) 「ディーノから聞いたからね」 あの人は…余計な事をしてくれたものだ。 「…ん?でも、オレはディーノさんに連絡なんかしてねぇぜ?」 「あぁ。あの人は、沢田から聞いたってさ」 「ツナから?」 「本人が言うんだからそうなんじゃない?」 まぁ、ツナには飛行機のチケット取ってもらったり、親父に一緒にマフィアになることについて説得と謝罪に来てもらったりして世話になったからなぁ…。そんなツナが、ディーノさんに連絡をしてもおかしくはないだろうな。 …ツナに、口止めしとくべきだったか…? いや、今更そんな事言っても変わらねぇんだし諦めるしかないだろうな…。まぁでも、オレはヒバリと一緒に恋人として仲間として(嫌がるだろうけど)頑張りたいと思う…。 * おまけ 「そんな事より、ちゃんと強くなったんだよね?」 「おぅ!スクアーロの技も盗んできたし、オレなりに強くなったつもりだぜ?」 「そう。じゃあ、ディーノの屋敷についたら早速手合わせしようか。どのくらい強くなったか、見てあげるよ」 「…オレ、こっちに着いたばっかで疲れてんだけど…」 「…じゃあ、明日…」 「それなら、大丈夫だぜ」 あぁ、機嫌悪くなった…。ムスッとした顔してやがる。 中学の時から、あんまし変わってねーや。そんな顔もかーわいい♪ 「ところで…」 「?」 「スクアーロって誰?」 「…(汗)」 おいおい…。今頃それかよ…。 「ほら、中学ん時にオレと闘ったロン毛だよ」 「あぁ、あの時の。でも君、あの時ロン毛に勝ったじゃない。それなのに、そいつと修業したの?」 「あぁ、元々オレの剣を強くさせたかったみたいでさ。オレもちょうど強くなりたかったしな。」 「ふーん…」 やばい…。さっきよりも機嫌が悪くなってる…。 オレのイタリアでの最初の仕事は、どうやらこの女王様の機嫌を直すところから始まるみたいだ…。 END |